フレンドごっこ

 JTBの時刻表が4月20日発売号で1000号を達成した。記念号は店頭で売り切れが続出し、今月初旬には増刷分も発売された。鉄道マニアの「バイブル」とも呼ばれる、時刻表の魅力を探った。
 1925(大正14)年春、JTBの前身の日本旅行文化協会が「汽車時間表 附汽船自動車発着表」(231ページ、50銭)を創刊した。以来、戦時中を含め84年間刊行され、ライバルの「JR時刻表」(5月号で553号)の2倍近い時を重ねた。創刊号の自社広告には「時間表の生命は正確に在り」と、今も引き継がれる精神が記されている。

 時刻表の基となるデータは、すべて紙。現在は「JTBパブリッシング」の編集部員26人が分担し、手作業でパソコンに入力する。JR各本・支社から提供されるダイヤは、路線ごとの表記ではなく、貨物や回送列車も記載され、資料を読み解く技術が要求される。

 私鉄やバス、飛行機、船舶など約850社に毎月、前月号のコピーを送り変更点を確認する。「根拠のない数字は一つもない」と、高山法悦(のりよし)編集長は胸を張る。

 ◇変わらぬ「弁」

 時刻表には創刊以来、さまざまな記号が使われてきた。かつての「赤帽所在駅」「和食堂」などのマークは消えたが、84年間変わらないのが弁当販売駅を示す「弁」の記号だ。

 旅に長い時間がかかり、食品の保存技術も十分でなかった時代、弁当は現地で調達せざるを得なかった。現在も各路線の欄外に駅弁の種類と金額を掲載、毎月製造・販売の約150社に確認する。

 木村嘉男・前編集長は「数字の羅列から想像の旅ができ、全国の駅弁も楽しめる。時刻表を読めば今の日本を知ることができる」と語る。

 ◇人気のクイズ

 時刻表で長年の人気コーナーが「早まわりクイズ」だ。指定駅を最短で回るルートを問うものだが、実は回答は事前に用意されておらず、読者の応募を検証し順位を決める。

 1000号では「千」がつくJR全駅を回る問題が出題された。「これまでのクイズで最も難易度が高い」(編集部)が、既に50通を超える応募が寄せられた。高山編集長は一度もクイズに挑戦したことがないという。「解いていると夢中になり仕事に支障をきたすから」と苦笑する。

 ◇終戦前は紙1枚

 時刻表は世相を映す。戦時中は中国大陸や台湾、朝鮮半島の鉄道網の地図やダイヤを掲載。終戦直前には紙1枚になったこともある。松本清張氏の推理小説「点と線」(58年)は、時刻表を駆使したトリックで話題になった。東海道新幹線が開業(64年10月)すると、0系新幹線が1年間、表紙を飾った。国鉄最後のダイヤ改正となった86年11月号は史上最多の200万部を記録。

 近年はインターネット検索の普及で販売部数は月平均15万部と落ち込む。高山編集長は「1000号は通過点。今後も読者が何を求めるか考えながら、一号一号確実に発行したい」。25日には1001号が発売される。